コラム咬み合わせ治療について

あやしい治療が横行??

咬み合わせが健康に対して大きな影響を与えていることは間違いないことだと思います。それでは現代医学の歯科としてはどの程度「咬み合わせ治療」は進んでいるのでしょうか? ネットで検索してみると、現在「咬み合わせ治療」を謳っている歯科医院は数多く存在します。どのHPを見てももっともと思えるような文章が書いてありますが、よく見てみると方法についてはそれぞれの歯科医院でやり方がかなり違うことに気付きます。ほかの治療、例えば歯を抜くとか被せるとかの治療の術式には多少の差はあれそこまで大きく変わることはありません。これはいったい何故でしょうか? 実は現在咬み合わせ治療に関しては、教科書に出てくるような治療法では改善されない場合が多く、いろいろな「派」がひしめき合っている状態なのです。そしてどの派の先生も「私の方法が一番だ・・」と言っています。・・・一体どれが本当なのでしょうか??

江戸時代、各種の「剣術」が統合され「剣道」になったように、また「柔術」が「柔道」になったようにどう考えても学問にいろいろな派があること自体おかしいと言わざるを得ません。患者さまにしてもやはりスタンダードな治療法がないとどの先生に治療を頼んだらよいのかさっぱり見当もつかないと思います。 患者サイドから見ると、いったい何を基準に診てもらう先生を選ぶのかということに尽きると思います。誰もが「私が一番・・」と言っている現状では良い先生に巡り合うのは至難の業と言わざるを得ません。「評判が良いから」「友人がかかって治ったから」果たしてそれだけで自分の体を預ける歯科医師を選んでもよいのでしょうか? 私の考えの根本は「歯科医療はあくまでも科学的であること」だと思っています。中には「結果が良ければプロセスはどうでもいいんじゃないの。」とおっしゃる歯科医も多く存在します。常識ある医師、歯科医師ならばEBM(Evidence Based Medicine)つまり医学的な裏付けに基づいた医療に則って患者さまを治療していくということは当然のことなのです。しかしこの歯科業界にはそうとも言えない治療が多く存在し、患者さまを治療しているというから驚きです。

例えば風邪を引いて内科にかかったら、いきなり医者が手を頭にかざして「うーん、気が乱れていますね。私が治しましょう。」と言って、指の先からパワーを送り込む、そんな治療をされたら普通はあやしい・・・と思います。 しかし残念ながらそれに似た治療が横行しているのが歯科における咬み合わせ治療なのです。患者様の指先にリングを作らせ、そこに力が入るか入らないかで咬み合わせ治療を行い挙句の果ては「気」が流れるからと言って患者様の手をつないで「気」を送り込む、そんな非科学的なことを当たり前のように行っている歯科医師がいます。それは咬み合わせが原因でいろいろな不調や症状が出て、わらをもつかむ思いで歯科医を頼って来た人たちに対するあまりにも思いやりのない仕打ちに同じ歯科医師として腹が立ちます。人間弱いところがあると、何でもよいからそこから抜け出したい、と思うと思いますが皆さんは決してそのような詐欺まがいの治療法に騙されないでください。

本当の咬み合わせ治療とは、多少の治療方法の差はあれ、コンピューターを使用したり、咬合紙(赤や青の紙)を使用して左右のバランスを診るものなのです。その他、咬み合わせの影響が全身に及んでいるときなどは体の傾きなどを診る場合もあります。少しでも科学的でないと思ったらすぐ歯科医師に質問してみてください。自分の身は自分で守る、そんなことも必要な時代になったようです。