1回法

埋入したインプラントの上部を歯肉の上に出したまま、インプラントと骨の結合期間をおく方法。
(下顎で骨欠損(吸収)が無い時や硬い時、また歯肉が薄い時等に適応。)
2次手術を行う必要がないため、患者様の負担は少なくなります。しかし術後にインプラントのヘッド部が出るため重度な歯周病を罹患している方、糖尿病など免疫力が低下している方などには向いていません。

インプラント埋入手術後2回法と異なり、ヘッドをそのまま出しておきます。 以前はあまり予後が良くないとも言われましたが、現在の研究では2回法に比べても成功率はさほど変わらないとされています。2次手術をする必要がないため患者様は1回の手術で済むというおおきな利点があり反面、手術直後にインプラントのヘッドが口腔内に露出するため感染の危険性にさらされるというリスクがあります。

2回法(基本的な手術法)

インプラントを顎に埋入したのち、歯肉で完全に覆い、インプラントと骨との結合する期間(8~12週間)を待って、2回目に歯肉からインプラント上部を露出する方法。手術後インプラント体を粘膜にて覆うため感染の危険性が少ない。またインプラント体が骨と結合するまで粘膜下に保護されることにより、安全に治癒期間を待つことができます。しかし2次手術(インプラント体の上部の粘膜を取る手術)を行わないといけないためやや患者様に対して身体的な負担が多くなります。
(骨欠損(吸収)がある時、)骨移植した時、骨が粗造およびやわらかい上顎に適応。

現在主流の方法です。まずインプラント埋入手術後粘膜を被せ、そのまま8~12週間待ちます。骨の細胞がインプラント体にしっかりと結合したのを確認した後、粘膜の一部を切開してインプラント体のヘッドを露出させます。そしてそこにアバットメントと呼ばれるチタン製のコネクターをスクリューにて繋ぎます。(前歯の場合はセラミック製のアバットメントが主流です。)そして型取りをしてセラミック冠や金属冠を被せて完了します。

サイナスリフト

吸収した上顎骨を造成する方法。 上顎の骨は下顎の比べて軟らかいので歯が抜けると急速に吸収します。 吸収が進むと骨が薄くなるのでそのままではインプラントを入れても植立させることは不可能です。そこで他の部分(多くは下顎骨の奥の部分)より骨を採取してきて上顎洞側壁から内に骨移植を行い上顎骨を造成します。オリジナルの骨の厚みが5mm以上ある場合はインプラント手術と同時にサイナスリフトを行いますが、それ以下の場合は移植骨が成熟したらインプラントを骨内に埋入します。ある程度の技量、経験を持ったドクターが行わないといけない手術です。

上顎、特に奥歯のインプラント治療を行う場合問題となるのは「上顎洞(じょうがくどう)」との位置関係です。これは上顎臼歯の奥にある空洞のことで、鼻と繋がっています。インプラント治療を行う予定の場所がこの上顎洞と近いとインプラントを埋入する骨が不足してそのままではインプラント治療を行うことができません。そこでその薄くなった骨を厚くするのがサイナスリフト [Sinus=上顎洞、Lift=上げる]という手術です。上顎洞の粘膜は1mm以上あり粘膜としては分厚い部類に入ります。その分丈夫ですので多少の引っ張りや圧迫に対しては十分な強度を持っています。その特徴を利用して、薄い骨とシュナイダー膜(上顎洞粘膜)の間に他の部位から採取した自家骨や骨補填材を入れて5~6ヶ月待つと、そこに新たな骨が生着してインプラントを埋入するのに十分な骨の厚みが出来上がります。その後インプラント手術を行い人工の歯を装着して完成します。

ソケットリフト

上顎洞の底部分が下がっている場合、インプラントが洞内に突き抜けないように特殊な骨ノミを使って、埋入ホールを作るとともに骨を圧縮しながら、上顎洞底を上げる方法。骨を削り取ることがなくノミによって側方、奥に自分自身の骨が圧縮されるため、骨密度の低い条件の悪い方でも良好な骨密度を得られることができる優れた方法です。またサイナスリフトに比べて患者様の身体的な負担も少なく、確実性も高いです。しかしある程度の骨の厚みがないと行うことができません。通常はインプラント埋入と同時に行います。

目的はサイナスリフトと全く同じですが、骨の厚みがある程度ある場合、インプラントを埋入するために開けた穴より自家骨や骨補填材を入れて骨を厚くする方法です。骨の側方から穴を開けるサイナスリフトよりは患者様にとっての負担度が小さいのが利点です。通常はインプラント埋入と同時に行います。

スプリットクレスト法

インプラントを埋入するには最低5mm程度幅が必要ですが、骨の吸収の仕方によっては先端が1~2mmしかない場合もあります。GRB(後述を参照)という方法もありますが、やはりインプラント本体がオリジナルの骨に囲まれていた方が安定し易いです。方式はまず狭くなった骨の頂上部に切り込みをいれ、そこに専用の器具を入れて骨を広げていきます。骨というのは本来弾力性があるため、その程度なら無理なく広がっていきます。そこに予定したインプラントを埋入して、隙間に骨補填材を使用して粘膜を縫合すると、大体3~4ヶ月で広げた骨が固まってきてインプラント自身が咬む力に耐えるような状況になってきます。

GBR法

GBRとは骨誘導法、つまりインプラントを埋入するだけの骨量がないとき、我々歯科医が必要な骨を作る方法のことです。必要な骨の量が少なければインプラント手術時に同時に行ってしまいますが、全く足らない場合はまずGBRを行い、3~4ヶ月待って骨がある程度成熟してからインプラント治療を行います。手順としては骨の足らない部分に口腔内の他の部分から自分の骨を採取するかもしくは化学的に合成された人工骨を用います。必要な場所に骨補填材料を填入して、その上に「メンブレン」と言われる膜を置きます。通常は6週間程度で吸収される人体に無害な膜を使用します。もしこれを使用しないと、骨の細胞が出てくる前に上皮組織や結合組織(簡単に言えば皮や粘膜のこと)が骨補填材料の内部にまで増殖して本来骨の細胞が育つはずのスペースを奪ってしまい骨の細胞が成長することができなくなってしまいます。そしてその新しい骨の細胞がある程度成熟したらインプラント治療を行うわけですが、やはり数ヶ月の治癒期間では新しい骨は本来の硬さを持っているわけではありません。しかし元からある骨がインプラント体をしっかりと支え、そこに新しくできた骨がインプラントの周りを覆う状況でもう2~3ヶ月待つと新生骨もかなり成熟度を増し硬くなってきて咬み合わせる力に対しても十分な能力を持つようになります。「膜」を使用することで2次感染しやすいことが難点ですが、ある程度予知性を持った治療法だと言えると思います。