かみ合わせと健康の関係

歯のかみ合わせが原因で肩こりや頭痛・腰痛、手足のしびれもしくは全身の不調、倦怠感、顔のゆがみ等、様々な病気を発症することがあります。あなたの様々な症状もかみ合わせが原因かもしれません。かみ合わせが原因で起こりうる症状があるということは歯科治療においては、体と相談しながらかみ合わせを作っていく視点が必要です。歯科ではなかなか、様々な体の症状とかみ合わせとの関係について論じられたことがありませんでした。ところが最近やっとかみ合わせと全身症状との関係が指摘され始めました。

例えば頭痛の原因の一つに筋肉が異常に緊張することにより、いわゆる筋肉のこりすぎから血流の障害が原因で起こる頭痛があります。CTやMRIをとって検査しても何も悪いところが見つかりません。整形外科や内科では、痛み止めをもらい、痛みがあるたびに薬を飲み続けるのが一般的です。では頭痛の原因である、筋肉の緊張はなぜ起きるのでしょうか?

筋の緊張は体の構造上のゆがみから起こっているものがほとんどです。筋肉に過剰な力がかかっていないバランスのとれた状態であればどこの筋肉も緊張しません。ところが日常の生活や仕事の上で、疲れから局所に疲労物質がたまったり、骨格がねじれたりする事があります。これは体の構造上必ず起こり得る事なのです。

骨といえば非常に硬く変形しないようなイメージを持たれるかもしれませんが、骨の構造は皮質骨という硬い骨とそれに覆われた海面骨という柔らかい骨の二重構造なのです。それだけゆがみ・ひずみを起こしやすいという事なのです。筋肉は骨にくっついているわけですから、骨がゆがめば引っ張られる筋肉やねじられる筋肉が出てきます。こういった過剰な不正な力が筋肉にかかり続けると、筋肉の中にある血管が圧迫され血行が悪くなり、こりにつながっていくのです。

こういった骨格の変化や筋肉の緊張は歯科治療に影響します。かみ合わせの決定される要因は骨・筋肉・歯の三つの要素から成ります。つまり骨格のゆがみや筋肉の緊張がある状態のままでは、正常な理想的なかみ合わせの位置ではないという事なのです。現在でも一般的な歯科治療は歯を形態的・機能的に回復するという事が大部分です。しかし、当院ではかみ合わせの異常からくる全身症状の改善、骨の歪みや筋肉の緊張の無い正常な状態での歯科治療など、もう一歩踏み込んだ治療をしていきたいと考えております。

当院のシステム

治療の流れに沿って話を進めて行きます。どのような疾患もそうなのですが、治療の前にはまず診査・診断が大事です。我々が日常の臨床で患者さんに最も多く訴えられる症状は歯の痛みです。そしてこの原因は?と診断を始めるわけです。咬み合わせの異常を今までは「歯」から「身体」への影響のことを説明してきましたが、その全く逆の現象も起きる場合もあるのです。

例えば元々「腰」が悪い方であれば、腰のゆがみはその腰の上に乗っている背骨のゆがみを引き起こします。背骨のゆがみは、さらに上の「首(頚椎)」の傾きやゆがみを引き起こします。その「首の傾きやズレ」がかみ合わせの不調を起こすのです。

この様に腰から、いわゆる体の下方から上方へ影響する上行性の場合と咬み合わせのずれから全身に影響する下行性の場合があるのです。ですから診断の最初は口の中の状態と全身状態を把握する事から始める必要があります。

口の中の状態の把握には通常の歯科治療に沿って、レントゲンや視診による虫歯や歯周病の進行など一般的な診査を行います。その上で現状での咬み合わせの位置を確認しておきます。次に、全身状態の把握は姿勢やバランスの確認、寝た状態で手足の左右の長さの違いなど見た目での確認をします。そして骨の変形や位置の異常が無いか、特定の場所に圧痛が無いか、筋肉のコリやハリが無いかなどの確認をしていきます。これらの診査によって現状の把握の後に初めて、口の中の必要な治療や体の調整を開始します。最初に確認した咬み合わせの位置が体の調整によって変化するのであれば、全身の影響を咬み合わせが受けている事になります。逆に口の中の治療を進める事により全身の症状が改善され圧痛やコリが減るのであれば、咬み合わせや口の中の異常が全身へ影響を与えていることになります。そういう意味においても最初の診査・診断が重要なのです。

「口の中」と、「口の中以外」が完全に分離している現在の医療制度では、このような発想自体浮かびにくいですし、一般の方にもこのような知識は浸透しにくいです。しかし最近では、体全体の診査、特に骨格が非常に影響していることが歯科の学会でも分かってきました。歯科医の間でも研究がすすみ、骨格の矯正や調整を組み合わせて行うと顎関節症などに良い効果があることが分かりました。

スプリントと顎関節のマニピュレーション

治療の流れというのは、来院→診査、診断→初期治療(生活習慣の改善、スプリント療法、理学療法(整体、セルフケア)、薬物療法など→結果の評価→歯科治療(咬み合わせの調整、矯正治療、被せ物など)という順序になります。まずは生活習慣の改善ですが、咬み合わせの異常を引き起こす可能性のある生活習慣を理解してもらう事が必要です。例えば、歯ぎしりや食いしばり、頬杖をつく、片側だけで噛む、ストレス、横向きに寝ているなど様々な生活習慣が影響を及ぼします。これらの行為に自覚が無い場合も多いのです。こういった点に注意する事によっても症状の軽減に繋がります。

次にスプリント療法ですが、スプリント装置とは見た目はボクシング選手が使うマウスピースを小さく薄くしたような形をしています。素材は半透明のアクリル樹脂を使用し、患者さん一人ひとりの歯型にあわせて個別に作ります。咬み合わせの変化を防ぐため歯にかぶされ、下顎の安定した位置を得られるように調整されています。それにより、関節や筋肉にかかる力が軽減できます。咬み合わせがずれると位置を調節しようと筋肉が過剰に反応して緊張し、凝りや痛みが生じます、そこでずれた咬み合わせを安定させ、凝りや痛みの改善を図る事ができます。使用期間中は、各症状の改善・緩和のチェックなどを定期的に行います。スプリント装置は自由に取りはずしが可能ですので、お好きな時間(例えば、自宅でくつろいでいる時や就寝前、通勤・通学時など)で簡単にご利用ができます。

理学療法として、整体や操体法(動物本来が持っている原始感覚(快か不快かを見極める感覚)を取り戻し、「気持ちいい」という快適感覚を聞き分け、体の求める快い方向に動いてバランスをとる運動療法)を用いての全身のバランス調整。顎関節のマニピュレーション(可動化療法ともいい、筋肉の過緊張を緩めて関節の運動を正常に整え、神経の活動レベルを一時的に下げて関節や筋肉の緊張を解くことで、結果として運動範囲を取り戻し痛みの軽減を促進します)。セルフケアとして、癖をとる運動や顎の力をつける体操の指導などがあります。

これらの初期治療を経て体のバランスを整えながら歯科治療を行う事によって咬み合わせの異常を改善し、心地よい咬み合わせを手に入れる事が出来ます。咬み合わせの改善を行うことで、長年の偏頭痛や肩こり他、体の不調に悩んでいる方が、これまでの症状がうそのように良くなる症例も多く紹介されています。寝たきりの老人が入れ歯を調整することで、自立歩行を取り戻した例もあります。そのような悩みを抱えている方や、歯科治療後の不調が改善しない方も一度相談されて咬み合わせを診てもらうことも有効なアプローチのひとつです。