コラム煙草の影響

煙草が歯に及ぼす影響

当院では、患者様本人の健康のため、また、喫煙が考えられているより多くの影響を周囲の人に与え、特に次世代を担う子供たちに影響を与えるということを考え、積極的に禁煙運動に取り組んでいます。「禁煙」は世界的な流れです。海外旅行に行ったことのある方なら、飛行機に「喫煙席」がないことはご存知だと思います。また、アメリカでは人が集まるレストラン、カフェなどでも、以前は「禁煙席」「喫煙席」と分けられていましたが、現在ではすべて禁煙です。店の中がひとつの空間である以上、禁煙席と喫煙席が共存するのは不可能なのです。喫煙者にとっては厳しいことだとは思いますが、非喫煙者から見れば当たり前のことなのです。レストランに食事に行って、なぜ、他人がまき散らす「毒ガス」を吸わされなければいけないのでしょうか?

平成12年度の日本人の成人喫煙率は32.9%です。その内訳は男性が53.5%、女性が13.7%と過去に比べ、減少傾向にあります。ただ、喫煙率の低下傾向は高齢者では顕著であることに対して、若年者では、緩やかで、しかも、女性においては増加傾向にあります。これら数値は他の先進諸国数字を大きく上回るものであります。そのため、周囲で多くの喫煙者がいるため、「みんなでやれば、怖くない。」の心理が働き、歩きタバコや吸殻のポイ捨て、人ごみの中での喫煙等、マナーの悪い喫煙者が目立つのでしょう。もはや喫煙者のモラルに頼ることが、いかに無意味であるということは議論の余地のないところだと思います。このたび東京都千代田区において、日本で初めて「歩きタバコ防止条例」が施行されました。現実に、どれだけ効果があるかわかりませんが、人ごみの中で、傍若無人にもタバコを吸っているマナーの悪い喫煙者に対して、少しでも心理的な抑制効果になればよいと思います。タバコの副流煙は、屋外であっても周囲の人の健康を損ねます。また、歩きタバコの火によって顔に火傷を負わされる子供も後を絶ちません。今後は狭い地域での条例だけではなく、法律によって、規制されることが望まれます。「天下の公道でタバコを吸って何が悪い。」という喫煙者の勝手な論理は、もはや通用しなくなりつつあると言えるでしょう。

子供は親を見て育ちます。若年者、特に中学、高校生の喫煙開始の動機は、「好奇心」「目立つから」「かっこいい」ということが多いようですが、親、友人、兄弟、学校の先生の喫煙などから影響を受けていることもわかっています。大事な子供たちを喫煙者にしないためにも、禁煙しませんか?

タバコと歯周病

タバコと歯周病、一見、何の関係もないように考えられがちですが、実は切っても切れない深い関係があります。歯周病は、細菌によって歯肉が炎症を起こし、その結果、歯肉の下にある骨(歯槽骨)が破壊され、歯がグラグラになり、最後には歯自体は何ともなくても、歯が抜け落ちてしまうという恐ろしい病気です。喫煙者の口腔内は、血行が悪くなるため、歯肉が黒くなっており、ブラッシングしても炎症の治りが悪いため、出血がしやすくなっています。また、口臭を伴う場合も少なくありません。また、体の防御機構である、ある種の免疫細胞は、喫煙によって数が少なくなることが証明されています。つまり喫煙者は、自分で自分の体を防御してくれるシステムを壊しているのです。そのため、我々歯科医が一生懸命、歯周病治療をしても、患者様が喫煙を続ける限り、良い結果を望むことは難しいのです。

右の写真はタバコを吸わない健康なお口の中と30年間タバコを吸い続けた人のお口の比較

  • 喫煙とお口の健康 クインテッセンス出版より引用

余談ですが、喫煙は老化を早めるということもわかっています。写真は一卵性双生児の姉妹です。片方が喫煙者、もう片方が非喫煙者です。どちらがどうか、言わなくてもお分かりでしょう。それでもあなたはタバコを吸い続けますか。